自分探しの「2年間」
はじめに
今回は私が運営ボランティアとして参加した、中高生向けのキャンプイベント「自分探しの3日間」での体験をレポートする。このイベントは毎年夏の時期に開催されており、今年で3回目を迎える。
私は2年前に開催された第1回にも今回同様ボランティアとして参加していたので、今年は2年ぶりの参加であった。
実はこの2年前の参加は、私の人生の大きな転機となった。2年前の体験がなければ、この記事をはじめ、他の体験レポートを書くこともなかっただろう。
「自分探しの3日間」とは
「自分探しの3日間」の参加者として想定されているのは、不登校や学校での人間関係などに悩む中高生である。
イベントの目的は、参加した子どもたちに、様々なワークショップを通して夢中になれるものを見つけてもらったり、仲間と協力しながら何かに取り組むという体験をしてもらうことである。
例えば第1回ではダンス講座やブログ講座、今回は消しゴムハンコを使った残暑見舞いのハガキ作りなどのコンテンツが準備されていた。
「料理作りの3日間」
「3日間で一番印象に残っていることはなんですか?」と問われたら、私は迷いなく即答することができる。
それは「料理」である。子育て中の人、それも夏休み中の人には強く共感いただけるのではないかと思うが、朝食を作り、食べ、片付けて少し経つと今度は昼食作りの時間がやってくる。
そして昼食をとり、片付け、少し経つと夕食作りの時間がやってくるのである。特に今回は10人分の食事を作る必要があり、調理器具やインフラも家庭と比べると整っているとはいえないキャンプ場での料理であったため、一日中料理に関わる作業に取り組んでいたと言っても過言ではない。
私は料理がかなり苦手な方ではあるが、それでもこれまでそれなりにキャンプの経験はある。少なくとも火おこしや飯盒炊飯の手順くらいは分かっていた。それに対し、参加者の中高生はキャンプ未経験か、それに近いような状態であった。それに加えて開催期間は厳しい猛暑が続く8月の上旬。炎天下の中での料理にはかなり苦労したに違いない。
初めのうちは、何から始めたら良いのかすら分からず、立っているだけの子がほとんどであった。それでも、「ここに水を入れて、それから……」「こんな感じで風を送ると良いよ」と教えていくと、2回目以降の料理では、「ここに水を入れるんだって」「こんな感じであおぐと良いらしいよ」と、教わった子が別の子に教えるという姿が見られた。
自分の家のように料理を作ってくれる親もおらず、自動で米が炊ける炊飯器のような便利な器具もないキャンプ場では、おなかが空けば自分の力でなんとかしなければならない。元々知り合いだった相手以外との会話や共同作業が見られるようになっていった。
死生観について語る
1日目の夜、運営側の大学生の一人が持参したカードゲームで遊ぶことになった。「カードゲーム」と言っても、それは様々な「価値観」が書かれたカードを使って死生観について語り合うというもの。「中高生にとっては少し難しいのではないか」「ただでさえ1日の疲れが溜まっている時間帯なのに、楽しんでもらえるのだろうか」と私はかなり不安を感じていた。
初めのうちは、やはり戸惑っている様子が見られた。しかしゲームが進むにつれて、積極的に質問してくれる子も出てきた。最後に一人ずつ、自分が死に直面した際に一番大切にしたいことについて話すという段階があるのだが、誰一人話すことにためらいを見せるということはなかった。
私の死生観を聞いて、自分から感想を共有してくれる子もいた。日中の様子を見ていて、人と話したり、人前で自分一人が話すということに苦手意識を抱いている子が多いという印象を受けたため、これにはかなり驚いた。
自分探しの2年間
冒頭に書いたように、2年前の「自分探しの3日間」は、私にとって大きな転機となった。私は中高生の「自分探し」をサポートするという役割で参加したが、2年前の3日間で一番「自分探し」の恩恵を受けたのは自分なのではないかとまで感じる。2年前にあったこと、それは「地方の地域でまちづくりに取り組んでいる人との出会い」であった。
私は高校生の頃から漠然と「まちづくり」というものに関心があった。当時住んでいた実家の近くに、全国でも有名なまちづくりに力を入れている自治体があり、それに感銘を受けたからである。しかし、当時は特に何か行動を起こしたりはしていなかった。
2年前の「自分探しの3日間」は、岡山県真庭市内のある廃校で行われたのだが、2日目には廃校を離れて同市内にある吉地区を観光するというプログラムが用意されていた。その時に案内を担当してくださったのが、「地域おこし協力隊」であった。私はその時「地域おこし協力隊」というものの存在を初めて知った。
そして、その方が吉地区の魅力や普段自分がどのような活動をしているかについて楽しそうに話す姿と、吉地区の豊かな自然にふれ、「まちづくり」の中でも「自然豊かな」「地方」で行う「まちづくり」に強く関心を抱いた。
「自分探しの3日間」を終え帰宅した私は、すぐに「地域おこし協力隊」について色々と調べ始めた。吉を案内してくださった協力隊の方と連絡先を交換していただいたりもした。
そこからの2年間、私は日本中を駆け回って「まちづくり」に関連するプログラムやボランティアに参加してきた。半年後の春休みには2週間にわたって地域おこし協力隊のインターンに参加し、インターンを終えた翌日から、北海道で1ヶ月半、その1年後に茨城で1ヶ月、住み込みでまちづくりに取り組んだ。
そのほか、秋田県のある自治体で商店街再興プロジェクトに参画したり、複数の地域で古民家の改修を体験したりもした。大学でも「地域資源論」というゼミに進み、友人の間ではすっかり「まちづくりの人」のイメージがついている。
冒頭で、「2年前の体験がなければ、この記事をはじめ、他の体験レポートを書くこともなかっただろう。」と書いたが、2年間のきっかけがなければ、住んでいるところを離れて日本各地を訪れるということもなかったに違いない。「自分探しの3日間」は、運営側の私にも大きな効果をもたらしたのである。
まとめ
料理をはじめとする様々な体験を通して、参加してくれた中高生は目に見えて変化を遂げた。そして私も、2年前の参加、そして詳しくは書かなかったが今回の参加を通しても、大きな収穫を得た。
この記事を書いていて気になったのが、中高生や、ボランティアとして参加した他の大学生が、どんなことを感じていたのかということである。幸い、大学生2人とはすぐに連絡を取ることができる。キャンプ中は運営に追われて大学生だけで深い話をする時間を取ることはできなかったが、今度改めて話を聞いてみたいと思った。そこで聞いた話を別の記事にまとめるのも良いかもしれない。